伸子は京染にとって、なくてはならない道具です。
伸子は太さが15㎜~0.5㎜、長さ1m~30㎝ほどの竹で出来ています。
その両先端にはステンレス針が植えてあります。
この針を反物の耳と呼ばれる部分(両サイドにある2ミリ程度の縁)に刺し留め、
竹のテンションで生地の皺を伸ばして染色作業が楽に行えるようにする
シンプルな道具です。
また、中空に吊った反物を刷毛染めするとき、布が揺れてしまい染め難いので、
伸子の中程を左手でグリップして揺れを抑えながら染めます。
現在はグラスファイバー製の伸子も販売されていて
樹脂製品なので染料が浸み込まないので洗浄は水洗いでOKの優れものです。
デメリットは熱に弱いことですが熱を掛けない染めではとても重宝します。
私の工房では染色時に炙り台や電熱器等で熱を掛ける染色を多く手掛けていますので
比較的、熱に強い昔ながらの竹製伸子を多用しています。
竹製伸子のデメリットは染めた後、布と接していた竹の両先端部分が染料を吸って、
汚れてしまいます。ですから染色後は大量の伸子を薬品で脱色、
水洗いをして天日で干すという手間のかかる作業が待っています。
汚れた伸子の脱色作業を疎かにしていますと、
次に染める白生地が伸子によって汚れてしまいますので、
しっかりと行わなければなりません。
染色は皆様が思い描かれる刷毛や筆で染めるという作業以外に、
伸子の洗浄作業等、染めを下支えする大切な作業が多々あります。
その作業を疎かにしては良い作品は誕生しないのです。
地味で縁の下の力持ち的な作業を面目にすることこそが
京染の美を下支えしているのです。