京染めは、いろいろな刷毛を用いて染めます。
その中から今回は片刷という刷毛のお話です。
写真をご覧いただいて、同じ大きさの2本の刷毛があります。
上の刷毛と下の刷毛を比べて何か違いがあるのですが、お分かりでしょうか?
そうなのです。
下の刷毛は刷毛先が水平になるよう(毛の長さが同じ)に組んであります。
一方、上の刷毛は毛の組み方が高い方から斜めに低くなるようになっていますね。
実は、この2本の刷毛は似て非なる使い方をするのです。
下の刷毛(刷毛先が水平の方)の主な使い方は、
友禅の彩色工程などで、比較的広い面を
斑無く素早く染料を塗ることに適しています。
対して上の刷毛、(刷毛先が斜め)は
布に絵を描いたり線を引いたり、ぼかしたりすることに適した刷毛です。
その片刷の使い方を少し説明させていただきます。
まず、刷毛の低い方には水のみ含ませた状態で、
毛の高い方には染料を含ませます。
すると刷毛の中で色の濃淡(グラデーション)が生まれます。
その濃淡状態のままで布に描きますと
一筆にて濃淡ぼかしのある色面を描くことができるのです。
この片刷は刷毛の全幅を使って
(描く方向に対して90度に刷毛を保ちながら)
線を描くと、その刷毛幅の線が描けます。
また描くときに進行方向に対して刷毛の角度を45度で線を引けば
刷毛幅の半分の幅で線を絵描くことができます。
進行方向に対して0度にした場合、
髪の毛1本ほどの細い線を描くこともできるという優れものの刷毛なのです。
私は線や様々なフォルムを描くとき、
この刷毛の幅(刷毛の角度)を連続的に変化させながら自在に模様や絵を描いています。
この片刷毛はとても便利で布を染めるのには適している道具なのです。
参考にYouTube動画で私が描き染めている動画がございますので、
ご興味のある方はご覧いただけたらと思います。