◆この作品を制作するにあたっての思い。
この作品では
牡丹の姿を借りて
「春の柔らかい光と空気感」を
表現したいと考えた。
そこで、
柔らかさの表現のために
素材として
白山紬を選んだ。
白山紬は
優しく、柔らかな発色をし
それに加えてドレープが美しい生地である。
白山紬のドレープは、
それによって生じる光沢感が光と影の美しさを演出する素材である。
また、同じ色でも
濃淡に変化する。そういった布の美点を考えて
この生地を選択した。
技法についても
柔らかな空気感を表現するには
ぬれ描きという手法を
選択した。
※ぬれ描き(布を濡らして
刷毛で模様を描く技法。
色面の際が柔らかな表情になる
特徴がある。)
さらに、空気感を出すために
その上から挽粉染めを
起用した。
挽粉染めというのは
着物でもそうだが
表面に一層ベールが被ったような
空気感が表現できる。
着物でも女性が美しく見えるように
挽粉染めを採用する。
※挽粉染め(木の粉を
布の上にばら撒いて
その粒状を写しとり
吹雪状に見せる技法)
ぬれ描きの上に挽粉染めを施した
独自の技法を編み出し
「濡れ描き挽粉染め」と名付けた。
その技法で染めることにより
春の柔らかい空気感を
表現できたと思う。
話は戻るが、制作にあたっては
ドレープを取るために
横に長く引き伸ばした
牡丹の図案を下絵とする必要があった。
原寸大の下絵を描き
仕上がりの状態を検証した。
広いホールで横に広げれば
横長の美しい牡丹になり
どの段階で引き伸ばしても
美しく見えるように設計されている。
結果的にそれは、
ドレープを施して美しい
伸ばしても美しい
後日制作をすることになる
狂言の衣装(素襖)へと繋がっていく。
このことについては
また別の機会に
お話したい。