金 彩
写真は私の制作した金彩友禅のテーブルセンターです。
上の作品は絹の白生地にダンマル描き(松脂を溶剤で溶かした液で筆描きすると、
その部分は染料を半透過する性質がある)をして乾燥後その上から挽粉染めを施し、
蒸し、揮発水洗(松脂を洗い落とす)、水元(水洗い)整理(染めた後、
生地は皺になったりするので元の生地幅に戻し、皺を取り、柔軟加工)をして、
染め工程が完成した後、更に金泥にて模様を描き加えて仕上げた作品です。
下の作品も同様に仕上げた後、草の模様部分を金箔にて描き、さらに砂子金加工
(金粉を撒く)を施して仕上げました。
金彩技法は、もともと友禅模様の仕上げ工程として、
着物の模様のわずかな部分(3%程度)に施されていました。
いわば染めの脇役的とまでは言わなくてもそれに近い存在でした。
でも、そのわずか3%が作品の出来上がりを決定することは珍しくありません。
現在でもその3%の良さを理解している染色家が好む用い方です。
近年、金彩の煌びやかで力強い表情を前面に打ち出した新しい表現として
脇役から主役に躍り出た技法があります。さらには染色模様を完全に廃して
金彩のみで模様を描く金彩友禅というストイックな表現ジャンルも生まれてきました。
私が金彩を用いて作品を制作する場合の考え方は前者、後者のどちらでもありません。
染めが勝ってはいけない、金彩が勝ってもいけない、其々の特徴を作品の中に
共存させて染め物として一つの表現となるように心がけています。
昨今、技法ばかり前面に出た作品が目につきますが、
作品作りは技法ありきではなく何を表現したいかが大切で、
その表現のために必要な技法を選び取るというのが本来の姿だと思います。
自分が表現したいことに金彩技法が必要ならば、その技法を用いるだけです。