写真左は、ろうけつ染めで制作した私の作品です。
雨上がりの夏の日、爽やかさを作品にしました。
ろうけつ染めは日本でも正倉院宝物に見られるように、
天平時代から染められていた伝統技法です。
その技法は溶かした蝋を布に塗り、
染まらない部分を作り出すことによって
染め進めるという手法です。
蝋には石油系のパラフィンとマイクロWAXと
天然系の木蝋、蜜蝋、等があります。
パラフィンは加熱したとき比較的融点が
低くサラサラとしていて筆で描きやすいのですが、
防染力は劣ります。
それに対してマイクロWAXは
融点が高く粘りがあり筆で描き難いのですが
防染力は強力です。
私は白抜きには、マイクロWAX を主に使い、
伸びやかな線を描く様な場合は
描き易いパラフィンを混合して使っています。
伏せ(防染)として用いる以外にも、
ろうけつ染めには
また別の表現の面白さがあります。
それは木蝋の半透過性を活かした色被りの美しさです。
木蝋は蝋でありながら、
少し親水性があり染料を透過する性質を併せ持っています。
この蝋は厚く塗ると防染力がありますが
薄く塗ると染料を透過させます。
この半透性という特徴を利用して、
筆のテクニックで塗布する蝋の厚みを連続的に変化させて描き、
その上から染料を塗りますと厚く塗られた部分は染料を通しませんが、
薄い部分には染料が浸透して染まり濃淡表現となります。(写真の雲)
また、カルナバ蝋という硬い蝋を塗って、
冷えたところで折り曲げたりしますと、
クラックが入り、その上から染料を塗りますと
陶器の嵌入に似た模様ができます。
この様に、ろうけつ染めで用いる各種蝋は
融点や性質がそれぞれ違うので、
表現したい事によって蝋を使い分けています。