写真は私が染めた格天井模様 友禅訪問着の部分です(まだゴム糸目が付いている状態です)
友禅は京染めを代表する染色のひとつです。
その特徴は細くて白い輪郭線(糸目)があることです。
糸目は防染効果がある輪郭線なので、色面と色面を染め分ける境目の役割を果たします。
この白い輪郭線があることでコントラストの強い配色をしても、
柔らかく受け止めて品よく仕上がります。
カジュアルな表現をしてもフォーマル感と格調を失わず上品です。
京友禅は様々な工程を経て順次染め上げられます。
全ての工程を記述しますと膨大になりますので簡単にお話します。
- 振袖、訪問着、留袖等、用途を決める、寸法の確定、
- 仕上がりイメージ構想、写生、
- 白生地の選定、
- 原寸大の下絵制作、
- 地色や模様の配色
- 下絵の輪郭線をトレースダウンして糸目を引く
(ゴム糊等、を糊筒に詰めて絞り出し、細い線を描く)
- 糊伏せ(糸目内部に防染糊を置いて、その部分を染まらなくする)
- 地色を染める(引き染め)
- 蒸し、水元をして防染糊のみ洗い落とす
- 模様部分を刷毛や筆にて彩色
- 揮発水洗、蒸し、水元、幅出し、柔軟加工
- 仕上げの彩色、金彩、刺繍、等
- 縫製
京友禅はこの様な工程を経て染め進められるのです。
近年、染色工程の分業化が進んだ結果、
それぞれの分野で熟練度の高い専門工が生まれました。
例えば、糸目屋さん、糊伏せ屋さん、引き染め屋さん、彩色屋さん
金彩屋さん、蒸し屋さん等々、です。
京友禅の分業化によって、その専門工の連携による制作が主流となり、
技術、技法、技能に裏打ちされた高い技術水準の着物が生まれました。
分業化による生産体制は低コスト且つ量産ができるというメリットをも獲得しました。
このようにして京友禅は京都の美意識と生産能力とが、
あいまって地場産業として発展してきたのです。
しかしながら分業化にはデメリットもあります。
それは多様な工程を各々の専門工に依頼することで順次、染め進めてゆく過程で
その連携がうまくとれない場合、不協和音となって染め上がりに悪影響を与えることもあります。
また、各工程の専門工は全ての染色工程の、ほんの一部分だけを加工するため、
その弊害として染め全体の流れや、
自身が担当する専門分野以外の知識、技術、技法、技能が把握しにくくなる上に、
最も大切な染色に対する美意識の確立ができ難くなるのは大きな問題です。
各々に分業化された専門工は言わば、ひとつの歯車的存在になりがちです。
工程の分業化は染色家としての染色理念形成の分断化でもあるのです。
効率優先、低コスト追求、分業化全盛の時代から時は流れ、
現代、染色工程の分業化の意味をあらためて問い直す時代になりました。
当工房では制作に対する作者の想いや美意識を大切にしていますので、
なるべく分業化しないで一人の染色作家が完成まで担当することを
心掛けて制作しております。
先人が残してくれた京友禅という宝物を
良い形で次の世代へと引き継ぎたいと思います。