写真は紬の着物用に制作した挽粉染め(天目染めともいう)の帯です。
挽粉染めは、あまりメジャーでない技法ですが、
その技法と魅力について少し説明させて頂きます。
技法は木材を切るときに出る鋸の微細なオガ屑を布全体に撒いて染めます。
この染めの特徴はオガ屑の撒き跡が地紋の様に浮き出てきて、
奥行感のある作品になります。
写真の染め帯では挽粉染めに更に松脂で染まらない部分を作りだし、
その白いアクセント模様の効果で、いっそう爽やかな印象の作品となりました。
この技法で着物の地色を染めますと、
お召しになった時に着物の表面に薄い空気のベールを纏った様な不思議な着物になります。
挽粉染めではない着物と比較しますと、その差に驚かれると思います。
当工房の挽粉染めは、質の良い挽粉を更に厳選し、
技術と手間を惜しみなく掛けて染めていますが、
染め上がった作品には、そういったことを一切感じさせずに、
限りなく美しい染め上がりになるようにと願って制作しています。
センスが良くて賢明な読者の皆様には、もう既にお分かりのことと思いますが、
私は、こういう至極シンプルで贅沢な染の魅力を世に知らしめたいと思っています。