私は着物や大作のパネルや染色屏風など大作を染めています。
普段は良い染め物になるように大真面目に取り組んでおります。
しかし、染め物を長年していますと、
時に何かばかばかしい物を染めたくなることが
無性にありまして、というか、
関西人の血が騒ぐのか、何でやねん!というアホなものを
染めたくなります。
手元に小さな桐箱蓋物があったので、
なぜかこれを染めてみたいと思いました。
その桐箱をジーッと見つめていると「栗羊羹や!」って閃いてしまった。
京染めでは立体物を染めることはまずない、
でも、だから、なおさらやってみたい。
現物を写生したいので栗羊羹は大好物ですので実利を兼ねて買ってきました。
写生画を元に箱6面体の全ての展開図を紙で作成して、
どこから見ても栗羊羹に見えるようにデザインしました。
しかも染めものとして美しくなるように図案化も必要なので、
試行錯誤を重ねました。完成した立体展開図の下絵を元に染め型を彫りました。
いよいよ桐箱を染めてゆきます。
先ずは羊羹のこげ茶色の部分を染めました。
次に栗の部分すべてを淡い黄色に染めました。
次に羊羹の内部にある栗を沈め描くために
羊羹本体を染めた時に余ったこげ茶色を
水で薄めて、上から重ね染めしました。
小さな桐箱は、ついに羊羹に変身しました。
母が鴨川おどりを観に行ったときに頂いてきた
青磁の小皿に乗せて黒文字を添えたら、
本当に食べられるように感じました。