私は学校で美術工芸課程、陶芸科を専攻していました。
その後、日展 陶芸作家 長谷川重一先生に薫陶を受けました。
以来、私は染色作家でありながら陶芸作家でもあります。
写真の作品は私が制作した陶板です。
この組作品は壁面を飾ったりテーブルのアクセントに用いたり、
オードブルなどを盛る皿にもなります。
このレリーフ作品を作るにあたり、
ろくろ成型では不向きな形ですから石膏型を用いることにしました。
まず粘土で無垢の形を作って、それを石膏型に起こしました。
粘土は信楽の土を選択し、
たたらで1㎝厚にスライスし、石膏型に押し当てて成型しました。
染物の場合もそうなのですが同じものを複数作る場合、型は適しているのですが
やや画一的になりすぎて面白みがないように感じました。
そこで、石膏型を用いながらも
画一的な要素を少し不揃いにするために
粘土を石膏型に押し当てる強さの強弱を付け、
また外側の形を敢えて歪めて成型しました。
白化粧掛け(白化粧とは、白土を水で溶いたものを流しかける)
を掛けるときにも、化粧土に入れる水の分量を多めにして斑に流し掛けしました。
釉薬は土灰釉を均等に掛けています。
最初の案では作品中央あたりに銅で色付けして酸化で(緑)を考えていたのですが、
色を用いないほうが白化粧の斑が面白いと思い、敢えて色を排除しました。
相当分厚い作品なので焼成した時の切れなどに注意し、
温度の上げ方も炙りを長くして徐々に上げてゆきました。
焼成後は、冷め割れを防ぐために時間をかけて冷ましました。
この作品は過日開催しました展覧会に出品し、好評を得ました。
陶芸作品のある暮らしは生活を豊かに彩るとともに、
使うこと、鑑賞することによって癒し効果が得られます。
人の手から生まれた陶芸作品は土の温かみや重さ、
釉薬の色や質感、触感などが
手と目から人の心に届き、癒しとなってゆくからなのです。
この感覚は安価を追求した大量生産品に慣れた現代人にとって新鮮な感覚を呼び起こされます。
天然素材を用いて人の手が生み出される陶芸作品は、
忙しく暮らす現代人にとって一服の清涼剤となります。
皆様、陶芸作品を身近に置いて癒しのある暮らしを手に入れてみては如何でしょうか。

