羽縫い(はぬい)ミシン
着物を染めるとき、最初の作業は1反の白生地の中から
各パーツを切り出すための目印を付けます(墨打ち)。
着物のパーツは左右袖、左右身頃、左右衽、本襟、掛け襟、共八掛、に分かれ
其々の裁ち位置と袖山、肩山、上下の目印を付けます。
手描き友禅の場合、その情報を基に模様の配置を決めて
糸目という防染力のある糊で輪郭線を筒描きします。
次に糸目で囲われた内部を刷毛で彩色し、地色を染め、
蒸し、水元をして仕上げます。
染め上った反物は各パーツに裁断されて一着の着物に縫い上げられます。
古い着物を染め直しする場合等には、
着物の縫いを全て解いて元の反物の状態に縫い戻す必要があります。
この工程を解き羽縫い(ときはぬい)と言います。
昔はこの作業を手縫いしていたそうで、たいへんな作業でした。
現代では写真の羽縫い用ロックミシンが活躍します。
現代といっても昭和製造のビンテージ?なこの機です。
このミシンは、しっかり縫えるのは勿論ですが、
染め直し作業が終わった後は再び着物に縫い直すために
羽縫い糸を外す必要があります。
その際も糸端を軽く引っ張ると
パラパラと簡単に糸が外れてくれるという優れものなのです。
昔の製品で頑丈なつくりをしていますが交換パーツが製造中止になっている場合や、
修理ができない場合もあるので、いつまで使えるのか?
ちょっと不安な面もあります。
ミシンに限らず染色周辺の道具類を製造している業者さんの廃業などで
道具や型紙等々、入手しにくい物も増えてきました。
さらに、上質な白生地も入手しにくい状況にあります。
しかしながら、ないならないなりに工夫をしていくことが
京染めを存続してきた推進力でした。
工夫をする機会を与えられたと捉えて
今後も良いものを染めたいと思っております。

